「記憶に残る風景をつくりたい」
四万十市不破に完成した屋形船を彷彿させる住宅を訪ねました。設計を担当したのは風憬社の代表である梅原佑司さん。著名建築家である堀部安嗣氏のもとで修業を積まれて数年後に独立されて以降は、木をふんだんに使った作品で多数の賞を受賞しています。普段は決して多くを語ることのない梅原氏ですが、穏やかな笑顔を浮かべながらインタビューに応じて頂きました。
▼四万十に新たなランドマークが完成。
―今回の住宅のコンセプトを教えて下さい。
「最初に施主様から依頼があってこの敷地を見た時に、四万十川が流れる景色を眺めながら暮らしたいという事でコンセプトは『四万十川を望む、船の様な建築』にしたいと思い、平屋のボリュームをコンクリートで立ち上げて浮かべるプランにしました。
―施主からはどの様な要望がありましたか。
「ササハラ鉄骨さんの泉さんから、施主様を紹介して頂きました。以前に設計した中久万の家を実際にご案内して気に入って頂いて、瓦や日本建築のプロポーションが好みという事で設計に入りました。その他の要望は2階リビングでゆったりとした広さにする点と、ヨガをするスペースと、ウッドデッキを設けたいという点です。」
▼本物の素材を活かした内装。
―特にこだわった点を教えてください。
「高知県産の木材を使って上質な空間を作りたいと思っていましたので、木材屋さんに相談してスッキリと見える節のない木を使っています。家全体を通して、出来るだけ自然素材を使いました。」
―住まいの性能はいかがでしょうか。
「長期優良住宅や耐震等級3などの認定は取ってますが、あえて前面には押し出してはいません。設計者として、そこはもちろんクリアした上で性能の話よりも、どんな暮らしをして、どんな風景が見えるかが重要だと考えてます。」
▼梅原 佑司さん(40)絵になるイケメン設計士。
―『風憬社』という社名の由来について教えて下さい。
「僕らの仕事は風景を創ることが出来る唯一の仕事だと思っています。風景ではなくて風憬にした理由は『憬れと人の記憶に残るような風景を創りたい』という思いから『風憬社』にしました。
―梅原さんの記憶の中にある、原風景を教えてください。
「窓辺に座って外を眺めるというのが自分にとっての原風景ですね。僕が設計した家には、窓際に力が入ってる作品が多いですね(笑)ホテルに行くと窓際に椅子があって庭を眺めたり出来るじゃないですか、あの空間が好きなんですよ。ああいう空間が自宅のリビングにも出来たらないいなと思ってます。」
▼梅原さんが大切にしている窓辺の風景。
―美しい建築の定義を教えてください。
「『機能美』という言葉がありますよね。ファッションではなく、なるべくしてなったデザインですね。機能的なモノは美しいですよね、家にしても使い勝手がいいものは時間が経っても美しいと思います。この住宅のデザインも全部に理由があるんです、それが結果的に美しいというのが理想です。」
―1階がコンクリートである事も理由がありますか。
「今回の土地は崖条例に入ってましたので、1階はコンクリート仕上げで窓を開けられません。だったらコンクリートで1階を全部持ち上げようというのが始まりで、デザインではなく、なるべくしてコンクリートになりました。1階がコンクリートだと、2階の方が大きくても持たすことが出来るので基本的な生活すべてを2階に出来るプランにしました。」
▼和の趣と無機質なRCとの組み合わせが斬新。
―梅原さんが最も影響を受けた設計士さんを教えてください。
「師匠の堀部安嗣さんですね。学生時代からお付き合いさせて貰ってます。今も高知にたまに来てるので、飲みにご一緒させて貰ったり。やはり師匠は偉大ですね。師匠から受け継いだものを僕なりに熟成させて高知の風土に合う建築を作っていかないといけないと思っています。」
ー堀部安嗣さんは、いつからの憧れですか。
「大学生の頃に、住宅雑誌を見ていて茨城の牛久のギャラリーという建物が載ってました。その建物を実際に見に行ってすごく感動して、そのまま現地から設計事務所に電話をかけて『どうしても、会いたいです!』と伝えました。そして翌日に会う約束を取り付け、『弟子にして下さい。』とお願いしました。
▼壁はローラーで塗った珪藻土。
―住宅雑誌を見て、堀部氏のどこに魅力を感じましたか。
「師匠の作品は全体を通して、他の建築家とは何か違うものを持ってるなと感じました。ファッションではない、地に足が着いた感じの設計をされる方です。雑誌に出てくる建築は写真映えするガラス張りの建築みたいな派手なものを好まれる傾向にあります。師匠の建築は地味だけど、カッコ良い。そういう部分に影響を受けました。」
―実際に完成してみて、いかかでしたか。
「最初に施主様に見せた模型のそのままだと思います。僕の場合、最初にかなり作り込んでいるのでイメージのまま出来上がりました。いい家になったなぁと思いますけどね。僕が住みたいぐらいですよ(笑)」
▼贅沢なリビングからの眺め。
設計
高知県高知市和泉町2-8 レトロワ102
tel. 088-823-4890
mail / info@fukeisha.com
施工会社
高知県四万十市具同田黒2丁目3-25
フリーコール:0800-500-3159
運営 / 有限会社ササハラ鉄骨
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※この記事は 発刊予定の「はたも~らVol. 」にも掲載予定です、是非ご覧ください。