キミの名は。#3
「気になる、あのヒトに会いたい」
コロナ収束の見通しが立っていない2021年秋。コロナの影響を特に受けている業界の一つが飲食店と言われています。そこで、今回インタビューの依頼をしたのはSNACK Tycho(ティコ)のチーママ<七々瀬>さん。この業界に入って10年が経つそうですが、これまでに経験のない日々が続く中で、お店を盛り上げるために試行錯誤を重ねています。周りの状況に関わらず、お店の事を考え続ける彼女に会いに行きました。
▲1992年高知県宿毛市生まれ。好きな言葉は<人間万時塞翁が馬>。
ママからお店を引き継いで一年になる
―コロナ禍になってからの営業はいかがですか。
「開けたり閉めたりですね。要請が出たら閉めるし、お客さんも以前に比べたら減りました。」
―ティコで働き始めてから、お客さんが最も多かったのはいつ頃ですか。
「3~4年前かな。コロナ以前に一番多いときで女の子が1日11人在籍してた時には20時のオープン直後には満席でした。でも、それが永遠に続くお店はない。様々な理由があって辞めたり、いつか卒業します。常に新しい女の子を入れないといけない業界なので、現在も募集中です。」
―水商売で働く皆さんにとって、大変な時期だと思います。
「コロナ禍になってから、色々と気付かされたのかもしれません。今まではあっという間に毎日が過ぎていました。でも、この1~2ヶ月間で緊急事態宣言になって休ませてもらって、身体はもちろん脳も休まるんですよ。自分の時間も大事やなと思えるようになったし、これからのことも前向きに考えるようになりました。」
―七々瀬さんは今までもママと一緒に二人三脚でやられてきたと思います。責任者になってみて違うことはありますか。
「肩書はチーママですけど、実質的にはママと同じ立場なんですね。私が甘えているだけですけど、正直に言うとママとしてやらせて頂いたらもっと違うと思う。ただ、これからのティコを引っ張っていってくれる女の子を見つけて育てるほうが私には合っていると感じてます。」
photo by koki miyashita
人気の出る女の子は、何が違うのか
―新たに一緒に働いてくれる女の子を探すことは大変ですよね。
「以前は働くスタッフも多いから、ソフトドリンクを飲んでも目立たなかった。お酒を飲めないのに、この仕事をしているんだと思うお客様もいるので、女の子が傷ついちゃう。ここに居たらいけないのかなとメンタルが傷ついて辞める子もいる。お酒を飲めなくても大丈夫だから、自分の長所を知って輝いて欲しい。」
―この記事を読んで、働くことを迷っているヒトへ伝えたいことはありますか。
「ティコを卒業した女の子は、お店で知り合ったお客様と結婚して寿退社も多いです。今は子供さんもいて、幸せに暮らしてる方もいます。家庭に入っても基本的な事をちゃんと出来るとか、昼間の仕事に転職してもこなしていけると伝えたい。」
―指名が入る人気の女の子と、そうでない場合と両方を見てきたと思いますが、何が違うのでしょうか。
「人気が出る子は自分の売りを知っていますね。元気な女の子ならそういうキャラでいくとか、ちょっと色っぽい子ならおとなしめに入るとか。そして、そのお客様がどういう子が好きなのかがすぐに分かる。足したり、引いたりが出来る子が伸びていきます。」
―それは入ってすぐに開花するものですか、それとも途中からですか。
「ほとんどは入ってある程度時間が経ってからですね。本人の努力もそうですし、周りの女の子のカバーも大切ですが、一番はお客様が育ててくれるんですよ。それで伸びていくと思います。 」
30歳での引退宣言についての真意
―お店を運営する上で、普段から心掛けていることはありますか。
「女の子を常に見つけるアンテナを張ること。以前は30代の方も何人かいたけど、今は20代の若い子が多いので元気な接客に切り替えています。私はティコを10年間見てきたので、その原点は失わないと思ってます。その時々で自分達らしい色を作っていけたらいいと思う。」
―30歳で引退するという考えは変わっていませんか。
「はい、もうすぐ29歳になります。2年もないんで結構追い込まれています(笑)自分に何が出来るのか、何を残せるのかっていうのを詰めてやっていかないといけない。幸いママをやりたいと言ってくれている子がいる。”チーママみたいになりたいです”と言ってくれる子がいるから、それだけで有り難いですね。」
―現在の状況でもティコを必要としてくれているお客様がいるのは、これまでに培ってきた人間関係からでしょうか。
「お客様との付き合いは長い方が多いですね。人間関係だったり信頼関係が一番大事じゃないですか。お客様にとって、大事なお得意様や大切なお客様を紹介してもらえるお店でありたいと思っています。接待が少なくなった今もそれを目指しているし、地元の人だけに愛されるだけではなく、県外の人も来てくれた方が色んな話も聞けるし、女の子たちの成長にもつながると思ってます。だからこそ、一日でも早くこの状況が良くなることを願っています。」
SNACK Tycho
[open] 20:00-24:00
[close] 日・月・祝日
高知県四万十市中村天神橋18 ホワイトストーンビル2F
[ t e l ] 0880-35-1137
※この記事は9月発刊予定の「Sirop #09」に掲載予定です、ぜひご覧ください。