「旅の記憶を建物や食べ物そして空間、全てに表現したい」
築56年の倉庫をリノベーションした<複合施設RUSTED(ラステッド)>が四万十市下田でオープンしました。オーナーの川島建人さんは中学生の時にフィリピンへ留学。高知高専を卒業してから海外での暮らしを経験して帰国後は設計事務所へ勤務します。独立後は築130年の古民家をリノベーションして4年前に始めたのが<加持ノ宿>。今回の新店舗は旅の記憶をもとに”旅情溢れる複合施設”をコンセプトとしてタイや関西から仕入れた植物を取り扱う<植物屋ゆらゆら>とフィリピン料理とスープのお店<亜熱帯地区はなれ>の2店舗をオープンしました。自分の内側にあるものを表現したいと語る川島さんにインタビューを行います。
▼複合施設RUSTED(ラステッド)の外観
―複合施設RUSTEDはどんな場所ですか。
「ラステッドは”錆びた”という意味で、この建物は一般的に言うとボロい建物かもしれません。でも、この錆びは時間の形跡だったり結晶だと思ってます。タイのチャトチャック市場に似てると思ったんです。建物はボロボロなんですけど、何店舗も入っていて食べ物や雑貨、植物も売っている複合施設みたいな雰囲気。その記憶をこの場所で表現できると思いました。今は2店舗ですが、旅に関係する“宿”をやっていきたい。最終的には衣・食・住の提案をしたい。」
―建物の外観について聞かせてください。
「この潮風と港風の中で時間が経過して、歴史ある建物を自分があまり手を加えず、そのまま残していきたい。そこを感じてもらいたくて、外観もそのままの状態にしています。旅してきた記憶からインスピレーションを受けていて、施設内に旅してきた記憶をちりばめたので、それを一緒にお客様にも共有してもらいたい。」
▼川島建人(かわしまけんと)さん 33歳 好きな映画はマトリックス
▼亜熱帯地区はなれの店内
―亜熱帯地区はなれについて教えて下さい。
「フィリピン料理とスープの店です。フィリピン人の母が作った料理を提供しているので、本場のフィリピン料理が食べられます。馴染みがないと思いますが、フィリピンは多様な文化がある国です。スペインの植民地だったので、スペインの影響を受けていて、戦時中は日本とアメリカがフィリピンで戦ったことも影響があると思う。エスニック料理が苦手な方もいると思いますが、フィリピン人がアレンジしてるから、日本人でも食べやすい味になっているので、広めていきたいです。」
▼フィリピンの味と温もりが楽しめるスープ3種類から選べます。(写真はBセット:春雨スープ+ルンピア+ウーロン茶)¥830円(税込)
▼サイドメニューも選べます。(写真はCセット:ティノーラ+手羽先+ライス+ホットコーヒー)¥980円(税込)
―川島さんについて教えてください。
「父親が土木の仕事をしている事もあって、”建てる人”と書いて、名前が建人ということで(笑)、宿毛工業の建築科に行きました。卒業したら美術が得意だったので美大に行きたかったんですよ。卒業するときに先生が『高知高専に編入する制度がある』と教えてくれたので、高知高専へ編入しました。卒業後は野市町に古民家再生をメインでやってる設計事務所で1年間働いた後は、オーストラリアにワーキングホリデーで留学と遊びを兼ねて行きました。 1年後に帰国してから、その後は東南アジアに3ヵ月くらい放浪の旅をしました。」
―海外に惹かれた理由は何でしょうか。
「母親がフィリピン人なので、異文化を常に感じていました。小さい時から海外に住みたいと思っていて、中学2年生の時にフィリピンへ留学しました。一人で現地の中学校に入って、1年間生活してたんですよ。言葉がまったく通じないから、電子辞書で毎回調べました。やらざるを得ない状況になって、リサーチしながら毎日生活して留学から帰ってきたら、今までの物事が簡単に見えてきた。言葉も通じるし(笑)。それから勉強も好きになって、成績が良くなっていきました。海外で得たものは経験や日本と違う文化を直接肌で感じたことですね。」
▼植物屋ゆらゆら 異世界へのエントランス
▼タイや関西へ自ら足を運んで仕入れている
―植物屋ゆらゆらについて教えてください。
「昔から植物にずっと癒されてきました。嫌なことがあっても植物に水やりをしたら癒されるのは皆さん、分かりますか(笑)。その癒しをみんなに分かってもらいたいのと、東南アジアを旅することで異世界を表現したいという思いがあります。僕は空間のデザインをやってるので、その延長線で植物の提案が出来る。インテリアにあった植物とはよく聞きますけど、植物にあったインテリアをやりたい。植物を主体に空間を作っていきたいし、今後は展開していきたい。植物を主体にした無機質な空間や、温かい空間を表現できるんじゃないかなと思ってます。」
―建築の仕事はいつからでしょうか。
「父から地元の設計事務所でバイトをやってみないかと言われて入ったのが22歳の時で4年間働きました。その後はデザインに興味があったので今西伴仁さんの設計事務所(アトリエ・トマト)で2年くらい働いた時期に一級建築士の資格を取りました。そこから自分自身で古民家の宿をやりたいなと思って始めたのが【加持ノ宿】ですね。」
―最後に川島さんの原動力について聞かせて下さい。
「僕の基本は自分の内側にあるものを表現せざるを得ないという衝動から生まれています。もともと何かを表現するのが好きなんですよ。加持ノ宿を始めて、次は異国情緒。自分が旅してきた記憶を建物や食べ物とか空間に表現したいと思って、この場所は旅情あふれる複合施設がコンセプト。珍しい植物や料理を見て異文化を感じてもらいたい。都会だったら知るキッカケはたくさんあると思いますけど、地方だとほとんどないじゃないですか。こっちの人には馴染みがないけど、『ソパスください』とか普段言わないじゃないですか(笑)。言葉で言ってくれるのが嬉しい。だから幡多の人々がここに来て、こんな珍しい植物を見ることができるんだ!っていうのを作りたくて。いろんな文化を知ってもらいたいですね。」
複合施設RUSTED
〒787-0155
高知県四万十市下田1719-3
[営業時間]
昼 /12:00~18:00
営業日 / 土・日・月
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※この記事は2025年1月発刊の「はらも~らVol.75」に掲載予定です。ぜひご覧ください。